海老ノート

Google Earth Engine 苦闘の記録

SARの勉強1

とっつきにくいイメージのSAR

前からいじってみたかったんだけど、よくわかんないので敬遠していたSAR。教科書や参考になるサイトを見ても数式やギリシア文字が登場し、ふーっとため息をつくばかり。成長を拒否するような自分には困ったものです。いろいろ扱いに注意がいるようだし、写真のように見えるLandsatやSentinel-2と比べると敷居があるなと。

Google Earth EngineでのSAR画像

Google Earth Engine にはSentinel-1とPALSAR-2/PALSARの全球モザイクが入っています。Sentinel-1はGRDは入っているけどSLCはなし。なので干渉SARを使うことはできないようです(GEEでは虚数が使えないからと言ってた)。

教材

Sentinel-1の扱いについてはチュートリアルのほか、Youtubeでのイントロ的な説明もあるのでここから勉強を始めることに。

www.youtube.com

その他、チュートリアルと動画で紹介のあった教科書やサイトなど勉強資料はこちら。

Layman's Interpretation Guide to L-band and C-band Synthetic Aperture Radar Data. Version 2.0

servirglobal.net

おなじみ宙畑先生も。

sorabatake.jp

こちらもおなじみとらりもん先生。

pen.envr.tsukuba.ac.jp

千葉大近藤先生

www.cr.chiba-u.jp

学んだことまとめ

分析に使うのは強度(InSARでないとき)

Sentinel-1でもPALSARでも、衛星からマイクロ波を照射→マイクロ波が地表で散乱→衛星に帰ってきて受信という流れで、帰ってきた信号の強度を測っている。で、後方散乱係数とか、それをデシベル単位にしたものがデータとして使える。この強度は地表の凸凹さツルツルさによって変わる。なぜかというとツルツルの表面(水面とか裸地)では斜め上方から照射されるマイクロ波は反射されて衛星方向に戻ってこないけど、樹木のように散乱する場合は一部が衛星方向に帰ってくるから。

〇バンドで、適した観察対象が変わる。

Sentinel-1はCバンド、PALSAR/PALSAR-2はLバンド。両者は周波数が違うから、得られるデータが違う。一般に、波長と同じくらいの大きさもしくはそれ以上の大きさの「物」にぶつかるとマイクロ波は反射/拡散されるが、それより小さいと通り抜けるらしい1。PALSAR-2の波長は23.5cmなので木の幹くらいの大きさ、一方Sentinel-1の波長は5.6cmで木の葉や小枝で、場合によっては草の葉でも検出できる。成熟した森林の場合バイオマスの多くは高木の幹に蓄積されるので、PALSAR-2は熱帯林のバイオマス推定に威力を発揮しているとのこと。

ノイズとエラー各種

光学センサーと異なる仕組みからノイズの種類も違っている。ここの理解はマイクロ波衛星データ活用のポイントなんだろうなと思った。

スペックルノイズ

SAR画像を見るとブツブツとごま塩状になっているけど、これがSpeckle。発生する理由は、いろんな方向に散乱したマイクロ波がある確率で強め合う/弱めあうことがあるから。GEEチュートリアルにも詳しい説明あり。これに対処するために各種フィルタが提唱されていて、GEEで使えるコードがGitHubで公開されている

www.mdpi.com

単純な、例えば5 x 5の窓での平均のフィルタでは画像がぼやける。ので、ノイズは少なく、だけどエッジはくっきりとすべく考えられた各種フィルタがある。主に空間(n x n窓での統計量を使って畳み込んだ値と元の値を重みづけして加算とか)、場合によってはそれに時間方向(前後のデータからn x n窓平均に対する差を見て補正)のフィルタ組み合わせて使うよう。また、GEEを使った論文では複数のSAR画像をImageCollectionとしてmedian()やmean()をとったり、圃場などある面積の平均値をとったりすることで対処しているのもあった。

地形の影響

SARデータは衛星から斜め下方向を見ているので、山があると陰側のデータは得られないし、衛星との向きと斜面のなす角度によってマイクロ波の入射角が変わることで、計測値が影響をうける。また、同じ理由から、画像にすると山の近い側の斜面は実際よりも近くにあるようになっちゃう。

これに対処するためにDEMを使ってTerrain Flatteningとよばれる処理をする。GEEではスペックルノイズで紹介したコードでできる。

水分の影響

土壌や植物に含まれる水分によってマイクロ波の減衰・拡散されやすさが変わる。必要であれば、同じ時期の画像をつかったり、雨の多い時期の画像は避けるとか対応する。

入射角

衛星が斜め方向から下を見るとき一枚の画像で近い側と通り側ができる。それにより入射角がかわるので計測値も影響をうける。一定程度はTerrain Flatteningで緩和できる。また、VH/VVの比を取るなどすると影響が低減できるらしい。

計測値と植被率やバイオマスの関係が飽和したりする

これは時の通りで、ある一定の植被率を超えると計測値との関係が飽和することが多い。また、植被率が低すぎると計測値の誤差が大きくなり(ノイズの影響が大きくなるから?)推定値がブレブレになることが多いらしい。

というわけで、頑張って学習しました。ノイズの性格がよくわかっていないので、そこら辺をもうちょっと勉強したいと思います。


  1. 「透過」という表現がされている場合があってX線的なイメージでちょっと混乱した。たぶん、波長が長いと波の回折で障害物を回り込んで奥まで届くということなんじゃないかと思う。