海老ノート

Google Earth Engine 苦闘の記録

SARの勉強4:Terrain Flattening その2

DEMの違い:SRTMとALOS

Google Earth Engineに入っている全球で使えるDEMは2種類。どちらも解像度30mだけど、SRTMはおよそ90m解像度のものを内挿してして30m1に、ALOSのは2.5m?だかの高精細なものをアップスケールして30mにしているという違いがある。この違いがTerrain Flatteningしたときはどう変わるか見てみる。

生駒

元のデータは2020年8月のDESCENDINGのVVデータ。違いは微妙だな。ALOSの方が落ち着いて見えるかな?程度。

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左:NASA SRTM Digital Elevation 30mで補正、右:ALOS DSM: Global 30mで補正

黒部ダム

もっと急な場所を見てみたいので黒部ダム。元のデータは2020年8月のDESCENDINGのVVデータ。

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左:NASA SRTM Digital Elevation 30mで補正、右:ALOS DSM: Global 30mで補正

薄緑色に抜けているのは山の陰になって値が取得できなかった場所。 これはALOSの勝ち。SRTMは細かい谷の陰にできるシワシワ感があるのに対し、ALOSは全体になじんだトーン。

というわけで、ALOSの方がよさそう。 一つ気になったのが、ALOSDSMは都会の大きなビルがわかるくらい細かいから、そういう場所(ビルの側面とか)の斜度をもとに補正すると極端な値になったりしないのかな?ということ。ただ新宿でやってみてみたけど、(見た目では)変な感じになってなかったから心配しなくていいのかも。

すごい急なところはどうなる?

黒部をみて思った。なんだかんだ言って、補正にも限界はある。谷間はしんどいし、尾根の向こう側もデータが取りづらい。これはもうどうしようもないんだろうなとわかりました。

で、じゃあ、何度くらいのところまでなら補正でしのげるのか?というのが気になる。 その周辺の地形と斜面方位も関係するはずから、どうやるべと思ったんですが、とりあえずグラフをいろいろ書いてみます。 まずはお手本?というか、超平らな場所はどうなんだろうと

傾斜は違うけど、広範囲に土地被覆に変化がなさそうな場所ということで、原生的な?ところを選んでみる。ざっとみたらスペックルノイズが気になったから、2か月間の平均をとっているけど、それでもノイズは残っていそう(特にVV)。グラフをRで書いてるけど、y軸の最大を適当に制限しているのでそれ以上の外れ値は無視しています。

白神山地

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傾斜(横軸)とSentinel-1 VV(縦軸)。点の色は斜面方位を表す。左:ASCENDING、右:DESCENDING

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傾斜(横軸)とSentinel-1 VH(縦軸)。点の色は斜面方位を表す。左:ASCENDING、右:DESCENDING

奄美大島南部

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傾斜(横軸)とSentinel-1 VV(縦軸)。点の色は斜面方位を表す。左:ASCENDING、右:DESCENDING

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傾斜(横軸)とSentinel-1 VH(縦軸)。点の色は斜面方位を表す。左:ASCENDING、右:DESCENDING

御蔵島

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傾斜(横軸)とSentinel-1 VV(縦軸)。点の色は斜面方位を表す。左:ASCENDING、右:DESCENDING

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傾斜(横軸)とSentinel-1 VH(縦軸)。点の色は斜面方位を表す。左:ASCENDING、右:DESCENDING

印象とまとめ

特にVVはノイズが残っているみたいで点のばらつきが大きい。とはいえ、VVもVHも全体をとおしてみると30度くらいを境に、森林でその値はないんじゃない?という高い値が目立ってくる。というわけで30度を超える斜面は止めた方がよさそう。 で、こういう異常値の点の色は揃っていてAESCENDINGで青色、DESCENDINGで黄色から緑なので、衛星の進行方向によって値が厳しくなる斜面方位がある(=陰になるとか)というのが推測できる。

一方20度くらいでもそれなりに高い値は出ているから、何度だったら大丈夫というのはちょっと言えない感じ。例えば傾斜が小さくても陰になっているとかあるだろうし。

まとめ

傾斜は小さいほうが良い。30度以上は止めること推奨。 何度だったら大丈夫かはわからない、(できたら)現地データとの比較で決めるとか。

データ取得のコードはこちら:https://code.earthengine.google.com/f6c94988e988cc1b90c7c382f2809970


  1. アメリカ合衆国は30mでデータ取得していて内挿していない